「真実はどこに?」 ~ WHOとIAEA 放射能汚染をめぐって ~

エマニュエラ・アンドレオーリ
ロマーノ・カヴァツォーニ
ウラディミール・チェルトコフ


少女:7歳の時から病気なの
取材スタッフ:今いくつ?
少女:もう14歳
取材:どこの具合が悪いの?
少女:膠原病です


取材:どこが痛むの?
少女:心臓 (泣き出す)
(先生?医師?がなだめる)
少女:ここに戻った時 頭も膝も痛かった
今は大丈夫
(となりで泣く友達の女の子)
ミシェル・フェルネックス医学博士:
(WHOへ向かうバスの中で)
WHOと私は協力関係にあります
マラリアとフィラリアの研究委員会で私は熱帯医学者として15年間働いたからです
WHOには大きな尊敬の念を持っていますが1986寝んから5年間 WHOがチェルノブイルの現場に不在であったことを大変悲しんでいます


5年間 彼らは現場に一切姿を見せなかった
WHOは国際原子力機関IAEAに現地調査を一任した
残念なことです


ナレーション:
バーゼル大学医学部名誉教授 ミシェル・フェルネックス博士は国連の2つの機関 WHOとIAEAとの癒着を告発する運動のリーダーの一人である
IAEAは原子力発電を促進する機関でWHOは世界の人々の健康を守る機関という対立する利害関係にある しかし1959年に両者が調印した協定でWHOは原子力の分野で独立した医学調査を行なったり チェルノブイリのような事故による健康被害の実態を世界の人々に伝えることが禁じられた


(2001年2月12日 ジュネーブのWHOの建物入口)
ここでは当時の国連事務総長コフィアナンとWHO事務局長ブルントラント宛に手紙が渡されている この協定を修正してWHOが放射能の影響を自由に調査できるように要請したものだ


先日受け取った皆様の請願書に関しては 皆様の不安は根拠がないと既にお答えしました
今日の請願書の内容は まだ存じ上げませんが しっかり検討するとお約束します
ブルントラント博士が週末前にお答えするでしょう 皆さん おいで下さってありがとう
1995年当時のWHO事務局長 中嶋宏博士はジュネーブに700人の専門家や医師を集めて チェルノブイリに関する国際会議を開催し 情報を広めようとしたが 待望の議事録は国際原子力機関IAEAの妨害によって一切発表されなかった
チェルノブイリの真実が知られれば 原子力産業の推進に大打撃となりうるからだ
フェルネックス博士:
次回の総会でWHOの会議内容の発表禁止が撤回される可能性もなくはない しかし その総会にはIAEAも確実に出席するでしょう 国連科学委員会やIAEAには莫大な資金があるので 貧しい国の専門家を買収するのは容易で 一万ドルでずいぶん買収できるのです
(2001年6月4日 キエフ)
フェルネックス博士:なぜ私たちの議事録が公表されなかったのですか
中嶋宏元WHO事務局長:会議がIAEAと共同で組織されたからですよ それが問題でした
フェ:この会議はジュネーブよりも自由なのでは?
中:私はもうここではWHO事務局長ではなくただの一私人ですから


ナレーション:
2001年6月 チェルノブイリの惨事の医学的結末に関する国際的会議がWHOの後援でキエフで開催された際 NPO団体「チェルノブイリの医師たち」は中嶋博士が名誉議長になることを望んでいた
取材スタッフ:WHOとIAEAの関係がWHOの自由を妨げたのです 矛盾しているとは思われませんか?
中:私は事務局長でしたから責任者でしたが わたしの責任が関わるのは 特に法律部門なのです  IAEAは国連安保理に従属し 私のような専門部局は全て経済社会開発委員会に属しています 専門部局はみな平等ですが 安保理に属する組織は 特に核に関することは 軍事目的と民事目的 平和目的あるいは民事核の権限は彼らにあります
取:彼らが命令するのですね
ナレーション:
人々の健康を守る組織が核開発の機関に従属していることを これほどきっぱり認めた人は これまで誰もいなかった この2つの国連組織は 世界の平和と人々の幸福を守るため ともに仕事をするときも それぞれ独立して組織の任務を遂行すべきである
(会議の模様)
ナレーション:
様々な矛盾や緊張や対立が、国連内部で生じていたが、この会議でも1995年の会議の中心人物と、
民間の医師や科学者の間に同じような緊張が生まれた。
D・ズプカ国連人道問題事務所OCHA:
チェルノブイリの影響は消え去りません。良そうで黄な形で常に大きくさらに深刻な問題となってきています。
国連事務総長aコフィ・アナンはチェルノブイリの遺産は私たちに残され未来の世代にもずっと継承されて
いくだろうときっぱり言いました。


ナレーション:
国連人道問題事務所の代表はコフィ・アナンと同じ意見だ。チェルノブイリの犠牲者を900万人と見積もり、
その悲劇を始まったばかりだ、と述べている。
(病院に入院中の子供達)
ぐったりと横たわる、頭髪のない男の子
喉と鼻にチューブを装着した少年
下腕全体に痣なのか発疹なのかが出ている男の子
あどけない女のこ
甲状腺の触診を受ける少年
頭髪が抜けてしまったのか、スカーフで頭をくるんで横たわる女の子
頭髪が抜けている少年。腕には添え木のようなもの。
すっかり頭髪が抜けている少女、少年。
隈の濃い少女
頭髪がなく、喉(口内)の診察を受ける少女。落ち着きのない様子。
乳児を揺すってあやしながらだっこする母:以下母:
私はモシール出身です。原発のすぐの町側です。直線距離でチェルノブイリから80Kmくらい。
インタビュアー:以下I
当時被曝量を測りましたか?
母:
(首を横に振りながら)測ったかもしれませんが、何も言われなかった。
I: 坊ちゃんですか、お嬢さんですか?
母:
男の子です。
I:
どんな具合なのですか?
母:
お医者様方によると、私が被曝したから私の免疫機能が弱って妊娠中は至極順調でも赤ちゃんは奇形児で
生まれつき敗血症と化膿性脳膜炎を患っています。
I:
チェルノブイリと関係があると思いますか?
母:
免疫機能が弱っている80%の女性がそうだと出産の時に言われました。
モシールでは新生児の30%が蘇生措置を必要としています。
I:
チェルノブイリの影響で免疫機能が低下・・・
母:
(鼻白みながら)医者はもっとよく知っているでしょう。
被曝した女性は、自分が汚染されているとも子供が病気になるとも思いもしないけれど、検査では明らかです。
I:
今出産している母親は皆、当時は少女でしたね。
母:
そうです。病院長が言うには、モシールの新生児600人のうち230人に蘇生装置が必要だったそうです。
子供はこんな状態です。私はそこの出身です。
(会議の模様)
D・ズプカ国連人道問題事務所OCHA:
この災害の大きさ、長期にわたる被害、国際的な影響に鑑みて、国際社会はチェルノブイリ事故による被害者900万人を
人道援助する義務があります。


A・ゴンザレス国連IAEA:
我々は現在何を知っているのか?実は新たな情報など何も無いのです。
ナレーション:
国際原子力機関IAEAの代表は、チェルノブイリの原発事故による死者は31人、高線量を浴びた被爆者は数百人、
甲状腺がんを発症したのは2000人の子供、という数字を採用している。この国連機関はアメリカのロスアラモス研究所や
フランスの原子力庁という、核爆弾を製造した組織が作成した報告書しか認めていない。
A・ゴンザレス国連IAEA:
ここで賞金100万ドル級の難問を一つ。
予想できない影響は測定もできないのに、本当にあると言えるのか?よくある質問です。
私の回答はこうです。
これは解決不能な化学認識論の問題で、直接理解する術はない。私たちは知らないのです。
結論を言うとこうです。チェルノブイリでは200シーベルトを浴びた30人が死んだ。
これは医療的に被曝と関連付けられる。子供の甲状腺がんは2000人。
現在のところ、チェルノブイリからの放射能が人々の健康に与えた影響について、国際的に認められる証拠はそれだけです。
放射能の露出による影響、ここが重要です。
詳細が欲しい方はこちらにご連絡ください。
私が言及した報告に関してIAEAは喜んで全情報をお伝えします。ご清聴ありがとう。
(拍手)
(満面の笑みのヤルモネンコ)


N・ゲントナー国連科学委員会UNSCEAR:
既に述べれられたように、除染作業員の間でも白血病患者の増加は確認されていません。
癌の増加についても科学的証明は一切ない。その他の非悪性疾患も事故による増加もない。
ナレーション:
放射線の影響に関する国連科学委員会代表の見解はIAEAと同じで、大多数のチェルノブイリ地方の住民の健康状態は
今後改善されていくだろう、というものである。
この機関の報告書は、各国政府に科学的基礎知識として採用され、これをもとに放射線防護や安全基準が定められている。
N・ゲントナー国連科学委員会UNSCEAR:
ゴンザレス博士が述べたように大多数の住民はチェルノブイリ事故による深刻な健康被害を心配する必要は一切ありません。
私のスライドはどんな議題にも適応できます。
すなわち、信じる者には説明不要で、信じない者には説明しても無駄です。
これはどんな局面にも当てはまります。
(声をあげて笑うヤルモネンコ)

N・ゲントナー国連科学委員会UNSCEAR:
しかし我々は科学的原理に基づいて感情を弄ぶことなく、最大限厳密なデータで住民や指導者に真実を伝えたいと考えます。
(拍手)
A・ヤブロコフ 生態学者:
ひどい!ひどすぎる!
インタビュアー:
なぜですか?
A・ヤブロコフ:
非客観的なデータの恥も外聞もない公表だ。彼らは賠償金を節約したいだけだ。
だから事故の影響が自分たちの想定よりも深刻であることを示すような研究結果はすべて排斥して根拠がないとみなす。
私が恐れているのは、これが臆面なく語られ、科学的な結論として発表されていることだ。
実際はただの決めつけ、非科学的な陳述なのだ。

↑16:30
(農村地帯へと場面が切り替わる)
老女:
ヤギを飼ってるんだ。まだ手放さないよ。
I:
放射能は気になりませんか?
老女:
あ~、だってそんなの目に見えないんだもの。
I:
放射能は体にいいって、今にうそぶかれますよ。
老女:
(笑いながら)年寄りにはいいかもね。
むしろ壮年の人たちが今死んでいるそうだよ。年寄りは生きてるよ。

(のどかに草を食むヤギ、車道を向かってくる荷馬車)
I:
子どもの健康状態は?
老女:
一人検査を受けてるよ。
I:
何か患って?
老女:
(喉のあたりを指しながら)ここに何かあるんだよ。
(幼い女の子と小学生ぐらいの男の子)
老女:
前はこの道に十数人も子供がいて賑やかだったよ。放射線がなかった頃さ。でも今は・・・
あそこの家は子供8人、みなそろって無気力だね。
昔の子供とは違うんだ。
昔は走って騒いで、氷の上でそり滑り。今は横になって眠るか、ずっと座ってるかだよ。

(女の子。鎖に繋がれた飼い犬)
(会議の模様)
A・ヤブロコフ:
チェルノブイリの事故直後、IAEAは積極的に介入しませんでした。理由はわかっています。
ブリックス事務局長は、事故直後に私に曰く「原子力産業はチェルノブイリ級の事故に、毎年でも耐えられる」。
この信念でIAEAは事故に対応しています。政治的な判断なのです。
各国政府代表の間で結ばれた取決めであり、自己の明白な影響を認めない人たちの結論です。
ナレーション:
ロシア科学アカデミー環境政策センター会長のアレクセイ・ヤブロコフは、世界の原子力産業から生み出される
放射性廃棄物をロシア連邦が受け入れるというプーチン政権が推進している政策と戦っている。


A・ヤブロコフ:
国の政策には、取り返しのつかない偽造がなされました。国家統計局の幹部がデータ捏造の罪で2年前に投獄されたのを
ご存じないのですか。国連科学委員会は知っています。偽造データの使用を自覚しています。
チェルノブイリの被害を軽く見せるためです。チェルノブイリ後の遺伝子への影響を否定するなんてとんでもない。
一番懸念されるのは遺伝子への影響です。
信頼おける雑誌に発表された十数の科学論文は遺伝子への影響の深刻さを示している。

もう一つ注目すべき例があります。
バンダジェフスキーは現在裁判にかけられて、9年の懲役を求刑されています。
この件に関して我々の会議としても裁判所に一言を呈するべきです。
バンダジェフスキーは突然死と放射性核種の体内接種との直接の関わりを明示しています。
これが証明されれば既存の事故の被害に膨大なデータを追加する必要があります。
(後姿)
ユーリ・バンダジェフスキー病理解剖学者 ゴメリ医科大学初代学長:
いつ爆発するともしれない爆弾を抱えているようなものだ。まったく予測不能な状況で、まったく予測不能な時代に。


ナレーション:
解剖病理学者のユーリ・バンダジェフスキーは、チェルノブイリの惨事によって汚染された地域で9年間研究を重ね、
食べ物を介して体内に定量摂取されたセシウム137が、生命に必要な臓器を徐々に破壊していくことや、
臓器によって蓄積濃度が変わること、さらに、一部の臓器に特に高い汚染がみられることなどを発見した。
また彼は、小児科医で心臓病専門のガリーナ夫人とともに、セシウム心筋症という新しい病理の存在を明らかにした。
一部の科学者はこの病気に、バンダジェフスキーの名が付けられるだろうと考えている。
セシウム汚染の量と期間がある限度を超えると心不全が慢性化し、全快は不可能になる。あらゆる年齢層、子供に於いても
突然死が起こりうる。これらの発見を公表し、政府の不介入を告発した矢先、バンダジェフスキー教授は汚職の疑いで逮捕、
拘留され、裁判までの間、自宅謹慎を言い渡された。
(バンダジェフスキーの居室)
ガリーナ夫人:
心臓の状態悪化と放射性セシウム摂取の相関性を発見した時はひどい夫婦喧嘩をやってしまったの。
私が心臓の状態悪化を認めなかったからだわ。これは発見だったのよ。
私たちは、以前は未知だった何か新しいものを発見した。ただ、この発見を私は恐れていたのね。
I: でも科学者にとっては成功じゃないですか!
ガリーナ夫人:
そうね、成功ね。でも、放射能の影響の話はこの国では避けるのよ。
バンダジェフスキー:
相関関係が認められて初めて科学の話になる。要因が何であれ、論理を追う必要がある。
I: 原因の追究ですか?
バンダジェフスキー:
原因と結果のつながり、これが問題なのです。
いくつかの要因は既に知られていても、それらの組み合わせや相関関係の立証が必要。それが科学なのです。
逮捕の日まで私はその価額に生きていた。この発見を皆に知ってもらうこと、これは大変重要だった。
誰が言ってもいい、バンダジェフスキー、バンダジェフスカヤ、シドロフ、ペトロフ。
私たちの子供が死んでいるんだ!
(会議の模様)
A・ヤブロコフ:
流産の増加、脂肪率の上昇、新生児患者の増加、遺伝子への悪影響や先天性奇形児の増加、癌の増加、
精神機能発達の遅れ、精神病患者の増加、免疫系の状態悪化、ホルモンの状態変化、心臓血管系の病気、
子供の成長の遅れや異常な衰弱状態、病気回復の遅れや老化の加速、せめてこのリストは認めるべきです。
バンダジェフスキー教授を再度引用します。
「体内に長時間蓄積した放射性核種に起因する症候群」まったく新しい症候群です。これが存在するのです。
なぜ否定できるのか?これは科学です。沈黙を決め込むのは道義に反するでしょう。
ご清聴ありがとうございます。
(拍手)


(立ち上がっている壇上へ向かうヤルモネンコ氏)
ヤルモネンコ 放射線生物学者:
ロシア放射線学共同体を代表いたしまして、国際機関各位に対して謝罪の意を表します。
各位がチェルノブイリ事故による健康被害を緩和するために多大な支援をくださっていることは、無数の発表によって
明らかであります。
ヤブロコフ氏の声明は畑違いも甚だしい。放射線生物学者でも放射線科医でもない故、彼は何の専門知識も持ち合わせないのです。
私どもが評価しており・・・
会場からの声:
こんな話をしてくれと、誰が頼みました?
ヤルモネンコ:
私どもは国際機関の仕事を評価しております。今後も同様の成果を発揮することを期待しております。
ご清聴ありがとうございます。
ヤブロコフ:
ひとこと言わせてください。
私は国際機関に敵対してはいません。ただ、私の述べたことを考慮していただき、チェルノブイリの真の影響を
無視しないでほしいと願うだけです。
(拍手)
ナレーション: 人間と動物の放射性生物学マニュアルの著者ヤルモネンコ教授は、汚染地区の大部分の住民避難を妨げたイルジン教授チームの
一員である。この一団は、子供でも妊婦でも、老人でも病人でも、誰でも許容できる被曝水準として悪名高い35レム説を掲げていた。
実際には、放射線防護の国際機関が一般人に対して認めている値は、その1/5である。
↑25:24


ゴンザロヴァ教授 生物学者/遺伝学者:
確かに特定の科学の原理や基礎の不可侵性について、ヤルモネンコ大先生に対して異議を挿める人は誰もいないでしょう。
これは放射線生物学にも言えることです。そこは認めたとしても、その裏には新しい知識を獲得するという面があるのです。
ここにまったく新しいデータがあります。
日本の財団法人、放射線影響研究所の科学者たちが現在発表しているものです。
放射線による身体疾患について、1999年に初めて出版されたものです。
会場からの声:
私たちは社会心理学的な影響を議論しているので・・・
ゴンザロヴァ教授:
新知識の獲得についてまさに社会心理学的な側面を私はお話しています。科学者たちが、新知識をどう理解解釈するかという
問題です。
会場からの声:
何たる破廉恥!
会場からの声:
どうか荒立てるようなことは・・・
ゴンザロヴァ教授:
話を終えさせてください。どうか邪魔をしないで。
会場からの声:
邪魔などしていません。お願いですから・・・
会場からの声:
中断しないで!話を続けさせて!
ゴンザロヴァ教授:
オクサナ・ガルネツ先生、最後までお聞きなさい。
ヤルモネンコ氏も他の皆さまも、いつか私たちの新情報を受け入れる時が来るでしょう。
その暁にはきっと新たな結論と教訓が得られることでしょう。
ご清聴感謝します。
ヤルモネンコ:
(憮然として)これが新情報だって!?恥ずかしくないのか?そんなもの戯言だよ。
ナレーション:
ベラルーシ科学アカデミー遺伝子研究所員ローザ・ゴンチャロヴァ教授は、チェルノブイリから200キロ離れた、セシウム137
による汚染が比較的少ない地域で、世代を追うごとに悪化する魚とげっ歯類の遺伝子にみられる異常ついて研究した。
↑27:36


(農村風景。民家。若いお母さんと幼児)
ワシーリ・ネステレンコ 物理学者:
こんにちは、坊や。
ナレーション:
放射線量はベクレルで示される。体内放射線量が体重1キロ当たり50ベクレルとは、体重10キロの子供の場合、毎秒500の
人口放射性原子が崩壊することを意味する。人体では、セシウム137は、ゼロベクレルであるべきだが、測ったばかりの
この子の数値は1万ベクレルもある。


ネステレンコ:
この子の体重は8キロだから、毎秒1万個の粒子が放射され、組織心筋、目を襲う。精神的発達にも影響を及ぼす。
許すまじきことだ。
ナレーション:
ネステレンコ教授にとって、チェルノブイリ事故は人生を一変する大衝撃だった。ベラルーシ科学アカデミー会員で、
国際レベルの物理学者として、彼は軍事的理由により立ち入り禁止区域にある旧ソ連内の複数の町に入ることができた。
すぐに事故の重大性を認識し、100キロ圏内の住民を即刻避難させるよう最高会議に要求した。その後、不安の種を蒔いた
という理由でミンスク原子力研究所所長を解任された。
KGBから圧力を受け、危うく2回の襲撃を免れた。
ネステレンコ教授は、専門家のグループと共同で、独立研究所を創設した。西欧の様々な基金に支えられ、子供たちの体内
放射能を測定し、食物中の放射能を減少させる方法について、家庭に情報を提供している。また、最も被曝した子供達には
体内に蓄積した放射性物質の排除を早めるアップルペクチンをベースにしたサプリメントを配布している。
(病院?の一室。あどけない表情の子供たちが次々にホールボディカウンターで計測している))
(ホールボディカウンターで計測中の幼児の値を見て)


ネステレンコ:
78ベクレル!多すぎる。
I:
いくつですか?
ネステレンコ:
78。これは多すぎる。この子の年齢と体格にしては多すぎる。
ナレーション:
ネステレンコ教授は体内の人口放射能を徹底的に計測する唯一の科学者である。彼が計測した値は、ベラルーシ厚生省発表の
8倍に上った。厚生省はこれを隠ぺいしようとしたが、教授の活動は合法的だったので、服従させることはできなかった。
バンダジェフスキー教授によると、体重1キロ当たり50ベクレル以上汚染されると、声明に不可欠な臓器が治療不可能な損傷を
受ける。
(会議場の廊下)
I:
この15年のセシウム汚染の大半は体内汚染なのでは?
ゲントナー:
体内ではありません!
人々が受けた外部被曝のお話ですか?
I:
内部被曝の話です。汚染食物の摂取により広地域で被曝しています。
ゲントナー:
被曝が体内か体外か、そんな考えは認めません。メカニズムがどうあれ、問題なのは被曝線量です。体内はより深刻などと
方って人々を騙しても、彼らの為にはなりません。
I:
幼児を含めて死に至る心臓疾患が観測されました。
ゲントナー:合併症は承知の上だが、それが事故の結果で、放射能のせいだという軽率な結論を出しても、公衆衛生を担う機関は人々を
助けられません。
I:放射能が原因の疾患が子供達にも見られます。
ゲントナー:
その件に関する情報は見たことがありません。
I:
ベラルーシの大学関係者が9年間研究しました。この研究にまったく興味を持たなかったのですか?
ゲントナー:
・・・。
↑32:03
32:03~37:41
{*所変わって*}
ヤルモネンコと女医達(の会話)


ヤルモネンコ: サンクトペテルブルグの良質な病院で簡単な治療をすれば1ヶ月で障害
を取り除けます。
女医1: そんなことはない回復は一時的です。一年後には再発し悪化します。
ヤルモネンコ: その病院にいたのですか?なぜそれを知っているのですか?
女医1: 私はもう15年も病院で働いています。
女医2: 低線量被爆がもたらす影響は未知なのです。
ヤルモネンコ: 未知だって? よく言えたもんだ! 放射能について私達は何もかも知っている。チェルノブイリで新たに学んだ事は何もない。チェルノブイリは無知な人々に教えただけ。
女医2: この状況は特殊で他とは全く違います。
ヤルモネンコ: そんな事断じてない。
女医2: 慢性でかつ永続します。
ヤルモネンコ: そんな事は断じてない。
女医3: 私達はモスクワへ報告書を提出しました。少量のセシウムを使って、長期的な十十件を実施しました。
ヤルモネンコ: 被検体は?
女医3: 動物、ネズミです。
ヤルモネンコ: それで?私なんか生涯ずっと実験してますよ。身体状況の悪化は観測されましたか?そんな事ありえない。もしあると言うなら、10回確認して下さい。 何かを主張することは、即ち権威ある研究者に反論すること。これをよく頭に叩き込んで!
女医3: 頭に叩き込まなくても目によく見えてますよ。
ヤルモネンコ: 10回見てください。
女医3: 10回見ました。
ヤルモネンコ: いいや、それは嘘です。私の目を見てください。
女医3: 見ていますよ。研究論文も発表したし。
ヤルモネンコ: そんなの無意味です。
女医3: 私達は反論をして欲しいのです。
ヤルモネンコ: 反論して何になる?
女医3: なぜ科学者が誰一人、まともに反論しないのか。私達には理解できません。
ヤルモネンコ: 聞きなさい! 何かの存在を主張するには、それが存在する事を証明する必要がある。証明の要点は二つ。まず、貴女達のデーターがあらゆる第三者、まずあなた自身によって再現可能であること。次に膨大な量の学問的経験と矛盾しないこと。
女医2: 私達は内部被曝の話をしているのです。
ヤルモネンコ: 内部か外部かなんてどうでもいい。
女医2: 私は低線量被爆の影響について、多くの出版物を分析しました。
ヤルモネンコ: 低量か大量かなんてどうでもいい。放射能へのなんたる無知。これほどの無能力は医者として許されない。
女医4: 低線量被爆は今後話題に上るでしょう。米国人の著名な科学者、アリス・スチワートもこれについて言及しています。この問題に詳しい優秀な科学者です。彼女はあなたのように無知ではないでしょう。
ヤルモネンコ: スチワートだろうが何だろうがどうでもいい。
女医4: ヤルモネンコだろうが何だろうがどうでもいい。重要なのは子ども達が低線量被爆のせいで死亡すると言うことです。
 (ヤルモネンコは逃げるようにその場を立ち去った。)
~会議が再開される~
テレネンコ: この15年間に誕生した子ども達は、幸いにも最初の放射能ショックは受けませんでしたが、15年間彼らは汚染食品を食べています。子ども達が受ける放射線量の方が高いというのは、被爆線量係数が、例えば3歳の子の場合大人に比べて5倍となるからです。食物はイナゴのように国中に広がるので、ミンクスで体重1kgあたり700~900Bqの子ども達が見つかっても驚くに値しないのです。
バンダジェフスキー教授の研究にご留意頂きたい。私も共に作業しました。彼が至った結論では、子どもの場合1kgあたり50Bqを超すと腎臓、肝臓、心臓等の必須臓器に病気が現れます。子ども達の健康状態は今大変悪くて、緊急措置を取らない限り、将来明るい見通しが持てないほどです。有難うございました。


M.サヴキン(放射線生物学者): 貴方の地域では子ども達が大人より多く被爆しているそうですが、厚生省の線量分析計のデータでは最も被爆したのは成人の職業人です。貴方の地域では子ども達ということですが、セシウムの内部被曝がベラルーシでは子どもに最も高く観測されるという原則的な矛盾をどう説明しますか?
テレネンコ: まず全ての住民を測定し、その後重症なグループを分離します。つまり、最も被爆している10~15人です。通常8人が子どもで、他はトラクター運転手、森林伐採者、たまに定年退職者もいます。彼らは自然の物を多く食べているからです。これは私達の11万にのぼる検査結果が物語っています。新陳代謝の活発な子ども達に放射能は蓄積しにくいと今まで考えてきましたが、実際は子供達に最も高い線量が観測されるのです。
モスクワ生物物理学研究所、科学センター副所長、サヴキン医師は、ICRP国際放射線防護委員会のメンバーである。彼は外部被曝に比べて内部被爆は取るに足らないと主張する。
ナレーション:
モスクワ生物物理学研究所 科学センター副所長である
サヴキン医師( -M.Savkin 放射線生物学者- ここまでの男性発言者)はICRP国際放射線防護委員会のメンバーである。彼は、外部被ばくに比べて内部被ばくは取るに足らないと主張する。


グスコヴァ医師(-A.Guskova 放射線生物学者- /女性発言者):
現実問題 社会状況を正常化する為には、既にかなり低下した放線量を、更にに下げるのではなく、放射能を原因としない病気を治療する為の社会構造、雇用や医療サポートを作ることが重要です。
ナレーション:
モスクワ・クルチャトフ原子力研究所の第六病院で主任を務めたグスコヴァ医師(A.Guskova 放射線生物学者)は、1986年チェルノブイリの重症被ばく者28人が死亡するまで治療にあたった。彼女はIAEAとの合意のもとに放射能の影響を過小評価した科学者グループに属し、健康問題を精神医学的に解釈し、放射能恐怖症とストレスが原因と診断したのである。


クリストファー・バスビー (C.Busdy 物理化学者 /男性発言者):
私はモリー・スコットと共同で欧州5カ国と米国で幼児白血病の増加を示すレポートを提出しました。これは明らかにチェルノブイリの影響です。
ナレーション:
クリス・バスビーは体内に取り込まれた放射性物質のリスクを研究する英国政府委員会のメンバーである。また欧州放射線リスク委員会の科学担当委員として、放射線防護のための低線量被曝による健康影響についての勧告文書を監修した。
クリス・バスビー:
先の欧州議会では最近、放射線リスクモデルの再評価を要求する決議が出ました。これはチェルノブイリ事故以降、私が列挙した国に現れた低量被曝の影響をうけてのことです。当会議でも放射線リスクモデルの見直しを要求する必要があるでしょう。過去10年間に多くの証明がされ、明白な証拠が提出され超低量被曝であっても検出可能な影響、より強い影響が認められるのです。既存のリスクモデル全体を覆す事実です。放射線に特に晒されたグループだけに注目してはなりません。そんなことをすればチェルノブイリの放射能の影響の多くが完全に見失われてしまうでしょう。
中嶋博士 :
覚えていますか?1996年か97年に、スペインのセビリアで開かれたWHOとIAEAの合同会議で、閾値ではなく、低線量被曝の定義をしました。我々にはすでに明確な勧告事項があるのです。貴方の表明は正しいと思うので、この勧告により正確に挿入されるべきでしょう。
クリス・バスビー:
会議で推薦されれば、超低線量の影響に関して、更に研究が進められることでしょう。
中嶋博士 :
―低線量被曝…
クリス・バスビー:
そうです。
中嶋博士 :
つまり 追加の文章ですね。
ナレーション;
クリス・バスビーは本会議に迎えられたにもかかわらず、彼の提言は結局、会議の最終決議文が推奨する研究リストの中には加えられなかった。


S.ヤルモネンコ:
事故から15年経た今、放射能は主要因ではない。そんなことは火を見るより明らかです。深刻な被害をもたらす要因は全て収束しました。放射能という要因はあっても唯一の原因ではなく、膨大な社会的要因と絡み合っています。
(女性が発言しようと挙手する・・・)
もう、すべて終ったのですから今さら得体の知れない放射線を排除し、慢性症状と闘わねばなどと躍起になる必要はないのです。そう、ないのです。
(挙手した女性発言者):
私たちは食糧不足で癌になったのではなく、正に放射線が原因なのです。ご理解の程を。
42分23の子供がうつっているところから
47分25のユーリ・バンダジェフスキー博士が出てくるまで
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(病院内、大勢の子どもたちがいる)
少年1:ぼくは血圧が高いんだ
血圧が上がると頭が痛む
98年に脳卒中になって3ヶ月入院したよ
取材ス:-脳卒中の後どんな症状があったの?
少年1:左足と腕が麻痺したよ
あとここ 顔の一部
(左頬の上部を指さす)
少年2:僕は先天性の心臓欠陥があります
取材ス:-どんな感じがするの?
少年3:どんな感じって・・・ 普通です
取材ス:-心臓は痛いの?
少年3:痛いです


少年4:走るとき 痛みを感じる
取材ス:-はっきり言ってどこが?
少年4:ここ
(心臓部分を触る)


少年5:生後3ヶ月の時 心臓に
雑音があるとわかった
いつもここにくるんだ
取材ス:遊べるの?走れる?
少女1:(少女1首を振る)
ううん(No)
取材ス:なぜ?
少女1:息が苦しいの
走るのがつらい
(少年が少女1を見る)
目の前が真っ暗になる


取材ス:-子供のこうした症状は
統計学的に見て普通ですか
病院ス:いいえ 
こうした症状は特に
子供に増えています
取材ス:-増え続けますか
病院ス:はい 生態系が確実に
関与しているので
(少年達が映る、無気力そうな表情も)
取材ス:-チェルノブイリが原因ということ?
病院ス:もちろん
取材ス:-悪化しましたか?
病院ス:ええ 全体的に
子供も他の住民も
健康状態が良くないわ


少年6:もう3回梗塞になった
心臓発作だよ
取材ス:-3回も発作?
少年6:そう それから胃炎
取材ス:いつ発作があったの?
少年6:小さい頃 小学校の時
取材ス:-今は何歳?
少年6:12歳
取材ス:-子供がこうした成人病に
罹るのは異常ですよね?
病院ス:確かに これらの病気の
発生年齢の概念は
大きくかわりました
成人特有の疾患が
今 子供を襲っています
少年7:祖母の家にいたけど血圧が上がって
目眩で立てなかった
3週間前からここだよ
僕の心臓に欠陥が
見つかったみたい
取材ス:-何歳なの?
少年7:13歳
取材ス:(子供たちが映る)
-子供の臓器の汚染具合を
調べるために
スペクトロメーターで
測定はしていますか?
病院ス:この病院では無理です
厳重警戒地域の子供は
移動式のラボがあって
そこで測定しています
でも全ての地域で測定を
受けられる訳ではないのです
(病院の廊下が映る)45:15
ナレーション:
ベラルーシー ウクライナ。
ロシアの厚生省は、病院で治療を受けている子供の病気と
内部被曝との関連性を認めない
もし彼らが内部被曝問題を真剣に受け止め
バンダジェフスキーが示したセシウム137と必須臓器の疾病との相関関係を明らかに出来れば
汚染地帯の子供たちに新しい病気が増えているという
懸念すべき状況に対して効果的な予防対策が取れることだろう
(国連会議の場面)45:43から
左の男性:問題は国連でこれらの
統計を入手できない事です
どの政府もデータを
私共に送ってきません
ネステレンコ教授:そんなの私たちが差し上げますよ!
左の男性:国連の公式な統計が
無くては何も出来ません
ウクライナ ベラルーシ ロシアからも
一切情報が来ません
ネステレンコ教授:ではバンダジェフスキー教授の
発表を渡します
ご存じでしょ?
彼の裁判は現在進行中で・・・
左の男性:-知ってますよ よく知ってます
(宇宙からみた地球の映像から、法廷内の映像)46:18から
ナレーション:
バンダジェフスキーは400以上の科学論文と8冊の本を発表し7つの特許を持つ5つの国際賞を受賞し、
5つのアカデミーの会員でもある。
しかし、彼は2001年6月18日ベラルーシ最高裁の軍事法廷で
汚職の過度で8年の強制労働を言い渡された。
1年間調査したのちも、容疑に関する物的証拠は一切出てこなかった。
(ビデオの軍服(?)着た男性)46:45
ヤンケレヴィッチ証人の供述はこうです
「私は研究所に学生二人を
裏入学させるために」
「バンダジェフスキーに
$7000を渡しました」
この供述が証拠でないと?
47:01
ナレーション:
法治国家において、証明できない断言は誹謗中傷である。
アムネスティーインターナショナルはバンダジェフスキーを良心の囚人とみなし、
欧州議会は研究を継続できるよう、彼に自由の為のパスポートを発給した。
欧州連合は、ベラルーシ刑法に照らして
この裁判には8つの違反があるとして再審を求めた。

取材ス:貴方にとっては放射能事故ではない?
ヤ教授:他の多くの要因と同様 放射能の要因もある。だだしそれは最もとるにたりないこと
女性研究者:よくわかりましたよ
女性研究者:どなたですか
取材ス:スイステレビ局です
ヤ教授:だれ?テレビだと?
女性研究者:スイステレビ局です
ヤ教授:ああ、スイスなら我々のテレビと同じだ

(会議出席者たちが席をたち、会場から出ようとしている)
ナレーション:三つの機関の方針に沿って体内に取り込まれたセシウムが健康を害するという
この会議で表明された新しい科学的知見は最終決議文には盛り込まれなかった。今日ベラルーシでは公式に健康とみなされるのは子供100人のうち20人である。チェルノブイリ事故以前は80%が健康とされていた。IAEA、UNSCEAR、WHOは体内に入った放射性物質による内部被曝の影響を研究せず、子供たちが患っている身体疾患の異様な増大についても一切説明しない。

(バックグラウンド音声)
サンキューベリーマッチ、サー。アリガト。
ざわめき、笑い声・・・

クレジット
音響:ロマーノ・カヴァツォーニ
   オルガ・キリチェンコ
映像:エマニュエラ・アンドレオーニ
監督:ウラジミール・チェルトコフ
フェルダ・フィルム・スイス2004

字幕翻訳:藤原かすみ
     藤本智子
     辻俊子
     コリン・コバヤシ
字幕制作:岩城知子
【終わり】